雑誌名 コピライト誌(2022年12月号/連載「メタバースと著作権法」第4回)
発行元 著作権情報センター
発行日 2022年12月1日
キーワード メタバース オープンメタバース クリエイターエコノミー デジタルコンテンツ 著作権 契約 利用規約
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【要旨(「はじめに」より抜粋)】
メタバースでは、視覚、聴覚その他すべての感覚に対する出力が、デジタルコンテンツとして創作され、流通し、体験される。現実世界では空間の一部を占める物理的なものとして存在する人物、建築物その他のあらゆる要素が、メタバースではアバターその他の3DCGモデルとして表現されるオブジェクトとなる。このため、これらデジタルコンテンツのデザイン、モデリング、プログラミング、実装等の創作活動を行うクリエイターの果たす役割が極めて大きい。それだけに、クリエイターが収入を得る巨大な新市場としても期待されている。
とりわけ海外では、異なる事業者が運営する複数のメタバースが相互に接続し、アバター、アイテム等がプラットフォームを超えて行き来する「オープンメタバース」を実現するための動きが活発化している。仮にこれが実現すれば、クリエイターやプラットフォーム事業者のマネタイズ戦略等に重大な影響を及ぼす可能性がある。
メタバースで利用されるアバターその他のオブジェクトは、著作物として著作権法による保護を受けることが多い(本連載第2回参照)。こうしたオブジェクトをメタバース・プラットフォームで販売したり、メタバース空間で利用したり、又は変更を加え若しくは他のオブジェクトと組み合わせることによって新たなオブジェクトを作り出したりすることは、複製、翻案、送信可能化、自動公衆送信等の方法による著作物の利用に該当する。すなわち、これらは原則としてクリエイターの著作権を侵害する行為となり得る。しかし、これではメタバース上の創作その他の表現活動が著しく妨げられ、かえってメタバースにおける文化の発展を阻害することにもなりかねない。ここで実務上極めて重要な役割を果たすのが、メタバース・プラットフォームの利用規約を中心とする、契約を通じた権利処理の仕組みである。
そこで、本連載の最終回となる本稿では、利用規約を含む契約による権利処理の方法を設計する上で留意すべきポイントを整理する。また、オープンメタバースの概念やメリット・デメリットを概観した上で、その法的な課題について若干考察する。最後に、メタバース上でオブジェクトが転々流通する経済圏が完成することを見据えて、デジタル消尽の考え方にも言及する。